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感情教育
[著者名] 中山可穂
[出版社/発売日] 講談社/00.02.01
[ISBN] 4062098334
[種類] 単行本  [ジャンル] 小説  [おすすめ度] ★★★ 

表紙1

--書評--
これまでも女性同士の恋愛を描き続けてきた中山可穂の作品。
第1章で主人公那智の生い立ちが、第2章ではもうひとりの主人公理緒の生い立ちが語られ、30歳代になったふたりは第3章で運命的な出会いをし、恋に落ちる。ふたりに共通 しているのは母親に捨てられた少女期の経験と、誰にも心の奥を見せずに生きてきたということ。
女性が女性に惹かれるという、いわゆる同性愛ものなので本を開くのにやや構えてしまったが、那智と理緒の関係が親密になるにつれ、特に違和感もなく、純粋な恋愛小説として読むことができるようになった。

1、2章は駆け足でそれぞれの半生が綴られており、親との生き別れ、養父の暴力、孤独な子供時代……などと悲惨ではあるのだが、その中で主人公たちの逞しさや成長ぶりが垣間見られ、面 白い。
だが、のちに出会ったふたりの間には不倫という障害が立ちはだかっている。
相手を想う気持ちはまっすぐでも、不倫は不倫。ましてや同性同士の恋ともなれば、世間にすんなりと受け入れられるはずもない。情熱と官能の蜜月を過ぎ、当然のように恋人たちは「別 れる別れない」で苦悩しはじめる。

著者はあとがきで、この作品を「個人的な小説ではあるが、私小説ではない」と書いている。
生身の女と女だからこそ、男女の付き合い以上の嫉妬心や愛憎は深く、私小説でないにしろ、それに近い生々しさがあるのは確かだ。
魂を傷つけあうほどの恋愛を通して、著者は誰もが持っているかもしれない心の奥の見たくない部分、嫌らしい部分をあらわにする。繊細な文体で刻まれるのは、女たちの普段はひそめている激しさだ。
突き付けられた剥き出しの感情に、私は目をそらしたい気持ちになった。それをすんなり読むことができず拒否反応を示してしまうのは、多分私の中にも同じものがあるからだ。
ただ、小説の結末は嵐が通り過ぎたあとのように、穏やかなのが救いではある。

記入日時 2002/08/16/06:46:04  No.13

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