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オレンジ・アンド・タール
[著者名] 藤沢周
[出版社/発売日] 朝日新聞社/00.04.01
[ISBN] 4022574925
[種類] 単行本  [ジャンル] 小説  [おすすめ度] ★★★★ 

表紙1

--書評--
集団ヒステリーのように苛立っているイマドキの若者はなんなのだ?
表題作『オレンジ・アンド・タール』はもともと新聞連載の小説だった。そのころ日本では残忍な少年犯罪が表出しはじめ、作家たちは先を争って14歳の問題を語り、それにまつわる小説を執筆していた。未成年者による暴力、殺人、自殺。そんなものを扱う文学が、この時期から異常に増えた気がする。

社会のはぐれ者であるアウトロー的主人公の登場する小説は、デビュー時から藤沢周にとっては定番だ。思春期の少年の衝動や猥雑な好奇心を、もっとセンセーショナルに書くのは簡単だったはずだが、藤沢周はあえて"犯罪以前"の物語(結末は別 にしても)をつくり、自我だけが増大していくのに何ひとつ思い通りにならない"ゆるい"日常での、高校生たちの苛立ちを淡々と綴っている。
考えてみれば、ニュースで報道される"一線"を越えてしまった少年たちの影のような、何万人という普通の若者たちは、その一線の手前でうろうろするしかない、この主人公カズキのようなものだろう。

古き良き時代にいた、無垢な少年少女は絶滅したのか。この小説に答えは用意されていない。友人の死、憧れの先輩、ほのかな恋---ここにあるのは大人にも子供にもなりきれない、ある季節特有の男の子たちのリアルな生態だ。
何も感じないふりをして生きる、"ゆるい"日常に反発することもなく慣れきってしまった大人が読むと、懐かしい心の揺らぎをおぼえるかもしれない。

※ちなみにこの本の中には2本の作品が収められている。カズキたち高校生側の視点で書いたものが『オレンジ・アンド・タール』、そして同じ物語を、カズキたちと関わりあうことになる青年トモロウの視点から描いたものが『シルバー・ビーンズ』という作品。カズキらのまだ素朴さの残る目で見た日常と、それより少し年を重ねた世捨て人のトモロウの目で見た現実。二作を読み比べてみるとおもしろい。

記入日時 2002/08/16/06:48:51  No.14

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