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今聴きたい 今話したい
[著者名] 山田詠美/瀬戸内寂聴
[出版社/発売日] 中央公論社/02.02.01
[ISBN] 412003237X
[種類] 単行本  [ジャンル] 対談  [おすすめ度] ★★★★ 

表紙1

--書評--
かつて“愛と性”の作家と呼ばれていたふたりの、対談集である。
タイトルと装丁だけ見ると、寂聴ファンの年輩読者向けかと錯覚するが、内容は人生論だけならず、老若男女問わずに楽しめる一冊だ。

意外と若い瀬戸内寂聴と、意外と地味な山田詠美。ふたりの年齢は20も離れているというが、その会話は年齢差もキャリアの差もまったく感じさせない。
文学について、死について、男について……などを語るふたりは、気のおけない女友達のようだ。

話題が進むにつれ、滲み出てくるのは瀬戸内寂聴の“芸術至上主義”という考え方。
これは決して芸術家が一番えらいという意味ではなく、芸術家(小説家含む)にとって、人生は何でもありだということ。
家庭や愛する人、そして幸福を犠牲にしてでも、芸術家は作品に身をそそがなくてはいけない。芸術家に幸せな生活など似合わない。
「唯一、芸術家の自殺だけは許されると思っている」との瀬戸内の言葉は、仏教の尼僧という肩書きも持つ者としては爆弾発言だろう。

瀬戸内は“小説家・瀬戸内寂聴として死にたい”という。
出家して30年の時を経ても、芸術を創る者としての姿勢を、少しも失っていないところに感心させられる。
「自分は宗教家としては大したことはない。ただ作家としては一流だ」。 彼女の強いプライドのようなものが、このひとことに要約されている。

瀬戸内寂聴の凛とした生きざまは、山田詠美が描く女性像に惹かれる読者ならば、きっと気に入るだろうと思う。

記入日時 2002/08/16/07:03:06  No.18

少年とアフリカ
[著者名] 坂本龍一/天童荒太
[出版社/発売日] 文芸春秋/01.02.01
[ISBN] 4163571000
[種類] 単行本  [ジャンル] 対談  [おすすめ度] ★★★★ 

表紙1

--書評--
ミュージシャンと小説家という、畑のちがうふたりの対談が一冊の本になった。 特に興味深いのは第1章の『少年』にまつわる話。

「もし自分の子供が少年に殺されたら」という話題に、坂本は「自分が犯罪者になってもいいから犯人を殺しにいく」と断言し、逆に天童は「殺したいくらい憎くても、ぼくは殺せない」というスタンスをとる。
『永遠の仔』での取材や読者の声を通して、実際に児童虐待などの体験者と関わってきた天童は、被害者と加害者、どちらも傷ついていることを知っているからこそ、きれいごとに聞こえても慎重さを崩さない。 テレビドラマ化もされ、児童虐待という問題を世間に知らしめた『永遠の仔』。 執筆後、読者からの重すぎる反応を受けて、何度も倒れてしまったという天童はやさしい人だなと思う。

一方、印象に残ったのは、普段は冷静に見える坂本が意外に直情型だということ。
天童とのコミュニケーションの中で少しずつ考えも変わっていったようだが、信念として「やられたらやり返す」「自分がイヤなことは何が何でも許さない」という、感情論が目立った。世界を股にかけて仕事をしてきた人間の強さなのだろうか。この「自分の身は自分で守る」という発想は、非常に欧州的な危機感の持ち方だろう。

犯罪が多い国では、常に自分のまわりを警戒しながら暮らすのが普通。 たとえば夜道を歩くにしても、そこに何か危険があるかもしれないのが当然であり、日本のように、酔っぱらいが一人でフラフラと歩いていれば、すぐに犯罪の標的になってしまう。
何も起こらない平和な国というのが一番の理想ではある。しかしいつ襲われるか、いつ事件に遭うか、そしてその場合にどうやって身を守ろうかと常に考えるくらいの意識が、今の日本でも必要になってきている。
そういう意味で、海外生活の長い坂本の意見は至極現実的だし、正しいのかもしれない。

私は今までそのような犯罪に対して、犯人と呼ばれることになった少年 たちにも同情できる部分があり、懲罰でなく彼らの心をひとつひとつ紐 解いていくのが重要だと考えていた。いわば天童のような慎重派に近い 意見だったのだ。

たがこの本を読んで、実のところ本音は坂本と同じなのだと気づかされた。もし本当に私自身がその立場になったら──。
「自分や、自分の家族が被害にあったら、必ず仕返しをする」 批判を恐れずにこう言える坂本は短絡的なのではなく、とても正直だと思う。
天童の良い意味での「普通さ」と、坂本の強烈な個性が歩み寄った、実のある対談集だった。

記入日時 2002/08/16/06:59:12  No.17

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