-舞台三昧-



『オイディプス王』主演:野村萬斎
野村萬斎、麻実れい出演の舞台、『オイディプス王』(蜷川幸雄演出)を観た。
萬斎は2時間以上出ずっぱり、休憩時間もなしと、非常にハードな状況にもかかわらず、貫録の演技だった。
もともと舞台人(狂言役者)なので、劇場の隅にまで届くセリフ回しのうまさ、発声の良さはもちろんのこと、当初「若すぎるか?」と思われた悲劇の王の役も堂々たるもの。
わざとなのかもしれないが、狂言風の喋り方も、和洋融合した蜷川の演劇に合っていた。
父を殺して、母と結婚すると予言されたオイディプスが、運命を恐れ、逃げおおせたはずのその運命に翻弄される、このギリシャ悲劇の代表的な作品。
あらすじを知っているのに、達者な役者たちにぐいぐいと引き込まれ、やがて舞台は血まみれの惨劇に・・・。あまりに過酷な運命のいたずらに戦慄した。
蜷川はこれまでもギリシャ悲劇をいくつも手がけているが、本公演はその中でも最高レベルに入るだろう。
萬斎を主演に抜擢したこと、そして音楽に東儀秀樹を迎えたこと。
ちょっとミーハーすぎる人選のような気がしていたが、ギリシャ悲劇の壮大な雰囲気に、伝統的な「和」をぶつけた蜷川のセンスには、いつもながら脱帽だ。


(2002/11/11/Mon/05:07:33)


『葵上/卒塔婆小町』美輪明宏
美輪明宏主演の舞台、『葵上/卒塔婆小町』を観劇。
今回のお芝居は三島由紀夫原作、そのほか主演・演出・美術とほとんどを美輪本人が手がけている。
そのおかげで、幻想的な美輪ワールドをたっぷり味わうことができた。

今回、非常によい席で観たので、まるでこの世の者じゃないような美輪の貫禄の演技と、ラストで踊るお姿も拝見……と、上演時間は短くても、もうお腹いっぱい。
逆に言えば、相手役を務めた宅麻伸も、その他の出演者も霞んでしまうくらい、美輪の存在感が圧倒的だったのだ。
いわば、美輪のワンマンショー。

だがこの舞台は、美輪による美輪を一番美しく見せるためのものなのだと思えば、それも納得できよう。



(2002/11/11/Mon/05:03:45)


ベジャール・バレエ団
モーリス・ベジャールバレエ団が来日している。
今回は2種類のプログラムとガラ公演が1日、予定されているようだ。

私が観た日は、フランス王室を豪奢に描いた『少年王』という演目を中心に、『タンゴ』、『ホアンとテレサ』という作品を上演。
その中でも特に、アルゼンチン・タンゴを音楽に使った『タンゴ』が魅力的だった。

冒頭からベジャール本人が登場、フランス語でなにやら台詞を喋ったのには驚いたが、演目自体はベジャールお得意の大人数での舞いあり、個性的なダンサーたちのソロあり、と多彩。
相変わらず衣装と音楽の使い方がモダンで、とても楽しめた。
ちなみにあとから台詞の対訳を読んだところ、内容も非常に思想的で、ベジャールらしいといえば、らしい。

このメッセージ性と演出の大げささを嫌う人もいるだろうが、そこが彼のよいところなのだ。
『少年王』の過剰にデコラティブな舞台など、ゴージャスすぎて笑ってしまうくらいだ。

この過剰さに、さらにメッセージの込められた演目『バレエ・フォー・ライフ』を、来週はまた堪能してきます。


(2002/11/11/Mon/05:02:28)


『熊川哲也ソロ』
先日、バレエダンサー・熊川哲也のソロ公演を観てきた。
一時はミーハーファンの黄色い歓声に辟易して、劇場から遠のいていたので、熊川の舞台を生で観るのは、何年かぶりだ。

公演自体は、休憩時間を除くと約1時間半という短時間。
何本かの作品を併せて上演するいわゆる“ガラ公演”だったので、その中でも、熊川がステージに上がるのは最初と最後の数十分の作品だけ。
正直、公演メニューをみたときは、少しがっかりした。

ただ、当の熊川は、数十分の出演でさすがの存在感を見せつけた。

モダンな演出で、くわえ煙草の伊達男を演じた『ボレロ』。
そして私が何より惹かれたのはトリを飾った『若者と死』だ。
ジャン・コクトー原作というだけあり、短篇ながら、物語性のある作品。
苦悩する主人公と、相手役の女性も美しく、物語の中に、熊川お得意のジャンプと回転も充分盛り込まれていた。
出演時間は短いながらも、この一本で、ファンの満足度はちゃんと満たされたのではないだろうか。
熊川は年を重ねて、身体的にも成長したような気がする。

少年ぽさが魅力のひとつではあったが、これからは大人の男としての成熟した踊りにも期待したい。


(2002/11/11/Mon/05:00:01)


『身毒丸』
藤原竜也/白石加世子出演の『身毒丸』を観た。
思えば数年前、蜷川幸雄演出の舞台を初めて観たのが、この『身毒丸』だった。(当時は武田真治主演)
もう何度も同じ演目を観ているというのに、その衝撃は尽きることがない。

役者ももちろん良いのだけれど、このお芝居、見どころは何といっても魑魅魍魎(ちみもうりょう)、悪夢のような演出!
舞台を駆けまわる小人、卒塔婆を担いで追ってくる“母”という名の女たち、異世界へ繋がる“穴”を持ち歩く男。

つぎつぎ現れる奇怪な世界に、まるで妖しい見世物小屋をのぞき込んだように、息つく間もなく釘づけになった90分間。

限りなくおどろおどろしく、それでいて感動的でもあるラストの主役たちの演技。義理の母と子の、愛と憎しみが悪趣味ぎりぎりに描かれているこの作品に、私はまたしても魅了された。
『身毒丸』は寺山修司の原作と、蜷川の稀有な才能が合致した傑作だ。

藤原の演技力は増していたが、中性的な“少年”を演じるのには、この年齢が限界だろう。
残念だが、やはり彼の『身毒』は今公演が最後だという。


(2002/11/11/Mon/04:54:00)





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